LOGIN二人は森の中を歩き回り、短めの柱となる硬い木四本と、屋根を支えるための長い木一本、そして骨組みを結びつける丈夫なツタを、協力して集めた。家を建てるわけではないので、長さが完璧に揃っていなくても、全く問題ない。ユウとリーナは、手を繋いだり、離したりしながら、終始笑い合い、材料集めを楽しんだ。
材料が揃うと、ユウが骨組みの作業に取り掛かった。彼は、短い四本の木を地面に突き刺し、ツタを使って長い木を梁として固定していく。その手つきは、農家の息子として鍛えられた器用さと力強さを感じさせた。
リーナは、ユウの側を離れず、ツタを引っ張ったり、木の枝を支えたりと、小さな体で一生懸命手伝った。彼女は、慣れない作業に汗を滲ませながらも、ユウと二人で何かを成し遂げているという喜びに、透き通る青い瞳を輝かせていた。
「すごいわ、ユウ! もう骨組みができたわね!」
「完璧だな! 次は床と屋根だ!」
床には、まず集めてきた枯葉をたっぷりと敷き詰め、さらに弾力のあるモフモフとした草を上から重ねた。リーナがその感触を「ふかふかよ!」と喜びながら踏み固める。その上に、大きな丈夫な葉を何枚も敷き詰めていった。これで、寝転んでも座っても、地面の硬さを感じない、最高の床が完成した。
最後に、長い梁の上に大きな葉を何重にも重ねて屋根とした。隙間ができないように、丁寧に、ツタでしっかりと固定した。
日が傾きかける頃、二人の協力の結晶である隠れ家が、立派に完成した。
完成した隠れ家は、四人が寝転がっても問題ないほどの広さがあり、周囲の木々の色に溶け込んで、まさしく秘密基地といった趣だった。骨組みはしっかりとしており、急な雨でも凌げそうな頑丈さがある。そして何よりも、内装の床は、ふかふかで柔らかな草と葉に覆われ、最高の安らぎ空間となっていた。
「わぁ……本当にできたわね! ユウ、すごいわ!」
リーナは感動したように目を潤ませ、ユウの腕に抱きついて、その立派な出来栄えを心から褒め称えた。ユウも、自分の作ったものがリーナにこんなにも喜ばれたことに、胸いっぱいの達成感を感じていた。
完成したばかりの秘密基地の中で、リーナはユウの腕に抱きついたまま、モジモジと落ち着かない様子を見せた。そして、透き通る青い瞳に不安の色を滲ませながら、ユウを見上げて尋ねた。
「ねえ、ユウ……ここは、二人の秘密基地よね……他の人には内緒よ?教えたらダメだからね!」
その言葉には、この特別な場所を独占したいという、純粋な独占欲が込められていた。
「うん。教えたら秘密基地じゃなくなるし……」
ユウは頷きながら、言葉を続けたが、次の言葉を口にするとき、急に声が小さくなった。
「せっかく二人だけで過ごせる……場所だし」
彼は、『二人だけで過ごせる』という言葉を強く意識してしまい、自分の胸の高鳴りがリーナに伝わるのではないかと羞恥心を覚えた。しかし、その小さな声には、この秘密の場所での二人の時間に対する、大きな期待が込められていた。
「う、うん。そうよ……二人だけの場所なんだから! 邪魔されたくないわ」
リーナは、顔を赤くさせながらも、ユウの言葉を肯定するようにハッキリと言い切った。その言葉には、誰にも邪魔されない、ユウとの親密な空間を求める強い意志が感じられた。
ユウは、リーナも自分と同じように『二人だけの特別な場所』を望んでいるのだと理解し、喜びが込み上げてくるのを感じた。彼は満面の笑顔で応え、その中性的で可愛らしい頬は、夕日に照らされたかのように赤く染まっていた。
リーナは、ユウのその輝くような笑顔を向けられ、「ドキッ」と胸が高鳴った。彼女にとって、それはいつまでもずっと見ていたいほど魅力的な笑顔だったが、その強すぎる輝きに耐えられず、照れ隠しのようにすぐに視線をそらしてしまった。
(……わたし、どうしたのかしら……)
リーナは、顔を背けたまま、胸の高鳴りに戸惑っていた。
(こんなにもドキドキして、昨日からずっとユウのことばっかり考えているし。ユウの顔を見ていたい気持ちがあるのに……ドキドキしすぎて直視できないなんて……。このまま、ずっとユウと一緒にいたいわ……)
彼女は、初めて覚えた強い感情の波に、ただただ流されるしかなかった。
ユウの視線が、自分が顔を背けたことで、もう自分を見ていないと分かると、リーナはそっとユウの腕に抱きついたまま、彼を見上げた。彼の横顔は、少し汗をかいているものの、優しくて頼もしい。
ユウの顔を見つめていると、リーナの胸の奥から熱が込み上げ、全身が『ぽわぁ』っと温かい幸福感に包まれた。この心地よさは、まるで生まれたての子猫が母親の温もりを感じているような、純粋で優しい感覚だった。
その温かさと同時に、彼女の心の中には、ユウの全てを包み込みたいという、初めてで不思議な衝動が湧き上がってきた。全身を強く抱きしめて、この温かい感情を確かめたい。
(これが、わたしがみんなと遊ばない理由を知っているはずの……あの、友達が言っていた『恋』というものなのかしら……?)
リーナは、自分の身体が自然とユウに寄り添い、透き通る青い瞳がユウの輪郭を追いかけてしまうことに、初めての恋のドキドキ感と、どうしようもない戸惑いを感じていた。その可愛らしい仕草は、純粋な少女の恋心が芽生えた瞬間を雄弁に物語っていた。 普段のリーナは、誰かに何かを求めることはほとんどなく、ましてや自分から会う約束を取り付けるなど考えられないことだった。それなのに、昨日からユウに対して求めてばかりいる自分がおかしいと思いつつも、彼女は聞かずにはいられなかった。明日も会えるという確約を得て、この幸せな時間を守りたかったのだ。「ユウ、あ、あの……明日も会えるのかしら……?」 リーナは、ユウの腕に抱きついたまま、不安と期待の入り混じった声で尋ねた。(昨日みたいに焦らしたら……きっとリーナは可愛い顔で怒るだろうな……困ってる顔はすごく可愛いから見たい気もするけど、今はやめておこう……十分に腕に抱きつかれて幸せだし、これ以上拗ねられたら寂しい) ユウはそう思い、即座に返した。「俺は大丈夫だよ。冒険者の練習だし、リーナから剣術を教わるのは、将来の俺にとって得る物がたくさんあるんだからな。剣術や討伐ごっこも、全部将来の為になるんだ」 ユウは、冒険者になるという夢を口実に、明日も会いたい気持ちを隠した。そして、今度はリーナの都合を気遣うように尋ねた。「リーナの方は大丈夫なのか?毎日、こんなに早く来れるのか?」 その言葉には、ユウの優しさと、彼女の身分(とユウが誤解している裕福な家庭の事情)を気遣う気持ちが込められていた。「え? あ、うん。わたしも……同じよ」 リーナは、ユウの腕から顔を離し、少し照れたように、そして慌てたように言った。彼女は、ユウと同じく、この秘密の逢瀬を正当化するための理由を口にした。「将来のための練習と経験よね……」 そう強がるように言うと、彼女はすぐに真剣な表情に戻り、ユウの手を強く握りしめた。「約束だから! わたしから約束をするの……珍しいのよ、ありがたく思いなさい!」 その言葉には、普段の彼女であれば絶対に見せない、ユウへの特別な好意と、この時間を大切にしたいという切実な願いが込められていた。(そうなの? 昨日もリーナから約束をしてきてたような……まあ、広場にいた時に見た感じ、他の友達と約束も話もあまりしてなかったし。そりゃ
二人は森の中を歩き回り、短めの柱となる硬い木四本と、屋根を支えるための長い木一本、そして骨組みを結びつける丈夫なツタを、協力して集めた。家を建てるわけではないので、長さが完璧に揃っていなくても、全く問題ない。ユウとリーナは、手を繋いだり、離したりしながら、終始笑い合い、材料集めを楽しんだ。 材料が揃うと、ユウが骨組みの作業に取り掛かった。彼は、短い四本の木を地面に突き刺し、ツタを使って長い木を梁として固定していく。その手つきは、農家の息子として鍛えられた器用さと力強さを感じさせた。 リーナは、ユウの側を離れず、ツタを引っ張ったり、木の枝を支えたりと、小さな体で一生懸命手伝った。彼女は、慣れない作業に汗を滲ませながらも、ユウと二人で何かを成し遂げているという喜びに、透き通る青い瞳を輝かせていた。「すごいわ、ユウ! もう骨組みができたわね!」「完璧だな! 次は床と屋根だ!」 床には、まず集めてきた枯葉をたっぷりと敷き詰め、さらに弾力のあるモフモフとした草を上から重ねた。リーナがその感触を「ふかふかよ!」と喜びながら踏み固める。その上に、大きな丈夫な葉を何枚も敷き詰めていった。これで、寝転んでも座っても、地面の硬さを感じない、最高の床が完成した。 最後に、長い梁の上に大きな葉を何重にも重ねて屋根とした。隙間ができないように、丁寧に、ツタでしっかりと固定した。 日が傾きかける頃、二人の協力の結晶である隠れ家が、立派に完成した。 完成した隠れ家は、四人が寝転がっても問題ないほどの広さがあり、周囲の木々の色に溶け込んで、まさしく秘密基地といった趣だった。骨組みはしっかりとしており、急な雨でも凌げそうな頑丈さがある。そして何よりも、内装の床は、ふかふかで柔らかな草と葉に覆われ、最高の安らぎ空間となっていた。「わぁ……本当にできたわね! ユウ、すごいわ!」 リーナは感動したように目を潤ませ、ユウの腕に抱きついて、その立派な出来栄えを心から褒め称えた。ユウも、自分の作ったものがリーナにこんなにも喜ばれたことに、胸いっぱいの達成感を感じていた。 完成したばかりの秘密基地の中で、リーナはユウの腕に抱きついたまま、モジモジと落ち着かない様子を見せた。そして、透き通る青い瞳に不安の色を滲ませながら、ユウを見上げて尋ねた。「ねえ、ユウ……ここは、二人の秘密基地よね…
「それだったら……洞窟か、作ってみるかだな。木の枝で骨組みを作って、大きな丈夫な葉を重ねればすぐにできると思うぞ。洞窟は魔物の棲みかになっていることがあるって聞いたことがあるからやめておこう。小さな洞穴だったら良いかもな」 リーナは、ユウの想像力の豊かさと、自分が思った以上の本格的な隠れ家ができると分かると、あまりの嬉しさに、繋いだままだったユウの腕を思わずギュッと掴み、飛び跳ねるように言った。「わぁっ。それ、どちらもステキねっ!」 無意識のうちにユウの腕を強く掴んでしまったことに、リーナはハッと気がつき、慌てて放そうとした。しかし、せっかく掴んだユウの、温かくて逞しい腕を、こんなに簡単に離してしまうのが勿体ないという気持ちが勝った。リーナは、顔を少し赤く染めながら、そっと掴んだユウの腕に力を込め直した。 リーナに腕を掴まれたユウは、まさか彼女がこんなにも素直に腕に抱きついてくるような形になるとは想像しておらず、内心大きなサプライズで胸が高鳴った。彼の顔は、思わず喜びでニヤけてしまいそうになるのを、必死で口元を引き締めて我慢した。 彼は、平静を装いながら、努めて明るい声で言った。「それじゃ、早速場所を探しに行くか! 最高の隠れ家を二人で一緒に見つけような!」 ユウは、リーナの温かい体温を感じながら、彼女の小さな手を握り直して、森のさらに奥へと足を進め始めた。「うんっ! 二人で一緒に……ね」 リーナは、ユウの腕に抱きついたまま、明るい笑顔で元気に返事をした。しかし、言葉の後半は、まるで秘密を分かち合うかのように、恥ずかしそうに、だが心から嬉しそうに小さく呟いた。 二人は、昨日休んでいた場所のさらに奥へと進むと、森が開けた場所に辿り着いた。そこは、周囲を太い木々にしっかりと囲まれており、たとえ強風が吹いても、木々が盾となって風の被害が及ばないであろう、隠れた空間だった。 見晴らしが良く、遠くから魔物や獣が現れてもすぐに発見できるため、安全性が高かった。さらに、中央には十分なスペースが確保されており、隠れ家を作る作業はもちろん、将来的に焚き火をして調理をしたり、剣術の修業をしたりするにも最適だった。「ここで良いんじゃないのか? 十分なスペースもあるし、明るいし……木々に囲まれてて秘密基地って感じじゃない?」 ユウは、その場所の条件の良さに興奮し
ユウは、その木剣を受け取るために一歩前に出ると、まるで舞台の一幕のように、ゆっくりと片膝を折った。その動作は、農作業で泥だらけになった服を着ているとは思えないほど滑らかで、一切の無駄がなかった。彼の淡い金髪がふわりと揺れ、透き通る青い瞳がまっすぐにリーナを見上げた。「ありがとう。大切に使うな」 ユウは、そう言って両手を添えて木剣を受け取る。指先の動きは丁寧で、剣を扱うというより、贈り物を受け取るような優雅さがあった。 ユウが木剣を受け取った、その一連の所作を見て、リーナは思わず息を呑んだ。 その流れるような優雅な動きは、彼女が王女として日常的に目にしている、王宮の騎士たちが主君に示す最上級の敬意と礼儀作法に酷似していた。けれど、ユウのそれは形式張ったものではなく、もっと自然で、もっと心を込めた優しさに満ちていて――リーナの胸の奥が、ふわりと温かい熱を帯びるのを感じた。「……っ」 言葉にならない感情が、喉の奥で揺れた。彼女は思わずユウから透き通る青い瞳をそらし、白い頬にはほんのりと赤みが差した。 ユウは、そんなリーナの動揺には気づかないまま、木剣を軽く構えて、いつもの屈託のない笑顔を見せた。「じゃあ、姫様を守る騎士として、今日も頑張らないとだな」 その言葉は、まるで彼女の心に巣食う王女としての孤独を癒すかのように、優しく響いた。リーナは、何も言えずにただ静かに頷くことしかできなかった。その日、彼女の心の中に、ユウに対する憧れと、特別な感情の小さな火が静かに灯った。「……ばかぁ。わたし……剣術の師匠でしょ……そういうの……反則よ……もぉ……」 リーナは、顔全体を真っ赤に染めながら、ユウには聞こえないほど小さな声で、そう呟いた。その声には、彼の思わぬ優雅な振る舞いに射抜かれてしまったことへの、照れと抗議が混じっていた。 リーナがユウの思わぬ行動に照れて、モジモジと落ち着かない様子で立っていると、ユウは再び彼女の小さな手を優しく握りしめた。 その突然の接触に、リーナは驚き、「きゃ、わ、わわぁっ。急に……なによっ」と、可愛らしい、上擦った声を上げた。彼女はすぐさまユウから視線を外し、俯きながら恥ずかしそうに顔を逸らした。手のひらから伝わるユウの体温が、彼女の心をかき乱していた。 一方、ユウは早く本格的に木剣を使い、剣術を教わりたい気持ちでいっぱ
翌日、ユウは父親の商売の都合を待たずに、一人で町へと向かった。 リーナと待ち合わせをしていた町の広場に到着すると、石畳の上に、ぽつんとリーナの姿があった。彼女は地面に視線を落とし、俯いており、その表情には小さな不安が影を落としていた。 ユウは、慌てて声を掛けた。「リーナ!まだ、こんな朝早くから来てたのか?」(俺は、リーナが待たなくても良いように、早めに来て町の友達と遊んで時間潰しでもすれば良いやって思って早く来たのに、まさかもう来ていたとは) 声を掛けられ、リーナの身体は「ビクッ」と小さく震えた。そして、不安から解放された安堵と喜びが、一気に彼女の表情を彩った。いつもの『にぱぁ』という、光が弾けるような飛び切りの笑顔をユウに向けた。「……わぁっ。別に……早く起きたから……暇だったのよ」 彼女は、嬉しさを隠そうと、すぐに照れ隠しの言葉を並べた。「もしかしたらユウが早く来てるかもって思っただけよ……待たせたら失礼でしょ……。わたしから約束をしたんだし……それだけよ」 リーナは、そう言うと、顔を赤く染めながらそっぽを向いた。その横顔には、ユウが早く来てくれたことへの隠しきれない喜びが滲んでいた。 ユウは、そんなリーナの照れ隠しなど気にも留めず、親愛の情を込めて、自然にリーナの小さな手を握った。その瞬間、リーナの身体は再び「ビクッ」と大きく震え、顔の赤みはさらに濃く深く染まった。彼女の透き通る青い瞳は、ユウの優しく大きな手の感触に、戸惑いと嬉しさで揺らめいていた。「俺も、リーナを待たせちゃ悪いと思って早く来たんだけどな……遅かったか。あまり早く来ると暇だし、危ないんじゃないのか?」「ん? 大丈夫よ。近くに警備兵の詰め所もあるじゃない」 ユウに手を握られたまま、リーナの透き通る青い瞳の視線は、広場の片隅に立つ警備兵の詰め所を捉えていた。その視線には、少しの緊張が混じっている。 ユウは、その視線に気づかぬふりをしつつも、リーナの小さな手を、もう一度ギュッと握りしめて言った。「ホントだ……でもさぁ……心配だし。朝早くから一人で待ってるのは禁止な?」 ユウの真剣な思いやりが、強く握られた手の温もりと共にリーナに伝わったのだろう。彼女は、照れくさそうに「んふふ♪」と微笑むと、恥ずかしさから視線をユウから逸らし、素直な返事をした。「んふふ♪ 分かっ
ユウは、その言葉に気合を入れ直し、興奮と楽しさに顔を輝かせた。二人の間には、剣術を教え合う真剣さと、冒険ごっこ特有のワクワク感が混じり合い、森の中は明るい笑い声に包まれていた。 一頻り魔物(に見立てた木の枝)を討伐し終えると、リーナは近くにあった倒木に腰を下ろした。彼女は満足げな表情で、木々の間を縫って見える澄んだ青空をしばし見上げていたが、すぐに視線をユウへと移し、今度は少し心配そうな面持ちで尋ねた。「はぁーこういうの楽しいわね! ねえ、ユウ……次は、いつ会えるの?」 ユウは、森の緑の絨毯のような草の上に大の字になって寝転がっていた。リーナが、次回も会えるのかと不安そうな顔をして聞いてくるのを感じ、彼の胸には抑えきれないほどの嬉しさが込み上げてきた。つい、その気持ちを隠すために、少しだけ意地悪をしてしまった。「んー……そうだな……」 ユウは、勿体ぶって返事を焦らした。その数秒の沈黙が、リーナには永遠のように感じられたのだろう。「……なによ。ふうん……わたしに、会いたくないのね……そう……いいわ。ふんっ」 リーナは、可愛らしく頬を『ぷくぅ』っと膨らませ、ユウとは反対の方向へとそっぽを向いてしまった。その姿は、まるで捨てられた子猫のように見えた。 ユウは、リーナの反応が予想以上に拗ねてしまったことに気づき、慌てて上半身を起こしてリーナの方へと視線を向けた。「は? なんでそうなるんだよ!? 明日、明日も来れるぞ。町までの道も覚えたし、思ったよりも近かったからな!」 ユウは、勢いよくそう告げた。その声には、リーナに会いたいという素直な気持ちと、彼女を悲しませてしまったことへの焦りが滲んでいた。 ユウの「明日も来れる」という言葉を聞いた瞬間、リーナの顔に浮かんでいた拗ねた表情は、あっという間に消え去った。 再び、彼女の顔には、まるで太陽のような『にぱぁ』という、輝く笑顔が咲き誇った。その嬉しさは隠しようもなく、透き通る青い瞳はキラキラと光を放ち、喜びを全身で表現していた。「わぁ……そうなんだ!? わたしも大丈夫よ! 約束ね! 絶対よ」 リーナは、前のめりになってユウの方へ身を乗り出すようにして、力強く約束を取り付けた。 ユウは、草の上に寝転がったままリーナを見上げていた。彼女が身を乗り出し、喜びで小さく弾むたびに、彼女の冒険者風の短いスカー